
キャットの加勢を手に入れるもオーランドが大怪我で離脱……そして、アンの身の安全を脅かす愛玩妖精グラディスことシャルの兄弟石ラファル・フェン・ラファルの存在。
新聖祭の砂糖菓子作りに一進一退のペイジ工房は、次代の工房とそこで仕事をする職人たちの誇りのために国教会の温情を蹴散らし、胸に萌す不安を隠しながら、ただひたすら前を見て走ることしかできなかった。
そんなある日、ルイストンの盛り場近くで酒浸りになったジョナスと遭遇。
ラドクリフ工房を追い出され荒んだ状態で放浪していた彼の中で未だ密かに燻る砂糖菓子への情熱を見抜いたアンは、一人の職人としてジョナスを勧誘する。
アンの言葉を受け「砂糖菓子を作りたい」という本音と向き合ったジョナスは、”器用さ”という武器を提げ、ペイジ工房の戦力に加わったのだった。
これで間に合う—— 皆がそう思った矢先、ラファルが襲来。
エリオットを人質にアンを、そしてアンを餌にしてシャルを誘き出し、瞬く間に二人を連れ去ってしまう。
かねてよりシャルを仲間にしたいと言っていたラファルの目的は?
そして職人頭を失ったペイジ工房はどうなってしまうのか?
大変に緊迫した展開……
シュガーアップル・フェアリーテイル第22話『妖精と人と』、はじまります。

アニメに比べて展開がゆったりな原作からすでにそうだったけど、アニメになってなおさらジェットコースターのような物語だよね。

それが楽しくてハマってるんでしょ?

まあね!
この記事は、しゃお*とHEROと管理人がTVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』第22話を視聴して内容を軽く紹介・解説しながら、感想を楽しくお喋りしている記事です。
原作の内容も含みますので、作品のネタバレを回避したい方は、ぜひここでブラウザバックしてアニメを視聴、または原作を読むことをお奨めします。
そしてぜひ、そのあとに感想を分かち合いましょう…!
Contents
アニメ22話は原作第6巻『銀砂糖師と赤の王国』四章から

Story Introduction
第22話『妖精と人と』
アンと羽をラファルに奪われ、命じられるままについていくシャル。
たどり着いたのは、ラファルが拠点とする荒れた城砦だった。
ラファルは自身の素性を語り、かつて人間王セドリックと戦った妖精王リゼルバの遺志を継ぎ、ともに妖精王となって妖精の国を取り戻そうとシャルを誘うが……。
22話は原作6巻の第四章『妖精と人と』のみ収録。
ところどころカット、変更がありつつ、原作では地の文数行のみもしくは描写の無かったシーンが加えられ、初めて妖精と人間の関係が深く語られた大変にシリアスなお話となっております。
今回、14話ぶりにキースが、そしてなんと第1クール4話で登場していた草の実の妖精ルスル・エル・ミン(cv.市ノ瀬加那)が久しぶりに登場しました。

ルスル……誰だっけ……

あれよ、アンがジョナスに品評会用の砂糖菓子を奪われて、半ばやけになってシャルに羽を返してまたひとりぼっちになった翌朝、やけに光る草の実が目の前にあったから見つめてたら生まれた小さい女の子の妖精だよ。

あー…いたかも。アンが生み出した妖精。
4話って随分前だね。
それでは、22話について語っていきましょう。
今回カットまたは再編により変更されたシーン
- 城砦に着いた直後の話【変更/一部カット】
- 兄弟石の会話【変更/一部カット】
- ラファルとの会話終了後のシャル【カット】
- ダウニング伯爵に報告するヒュー・マーキュリー【追加】
- 報せを聞いて一人ホリーリーフ城を訪問するキース【変更/追加】
- 「キースってさ、結構自意識過剰だよねぇ」【追加】
- 襲われる砂糖菓子職人や妖精商人【追加】
- 仕事を続ける職人たち、捜索を続ける銀砂糖子爵【追加】
- 「おまえが彼を不幸にするぞ」【追加/一部カット】
- 「わたし、もうどうしたらいいか分からない」【追加】

多くない?今回って章一つだよね?

はい(笑) えーとですね、この四章、元々文字数以上の情報量でして。
それを伝わりやすく、アニメとして起伏を付けつつ再編したりカットしたりシーンを追加したりが結構行われていたので細かく拾わざるを得なくてこの数になりました。
これでも絞ったんですよね…

なるほど……じゃあ頑張って管理人に語ってもらおう(笑)
がんばります(笑)
ラファルとシャルの兄弟石の会話、キースとエリオットのエピソード「キースってさ、結構自意識過剰だよねぇ」、そしてラファルとアンの「おまえが彼を不幸にするぞ」、そして22話のラストシーン「わたし、もうどうしたらいいか分からない」は専用の段落を設けておりますので、そちらでまとめてお話しします。
城砦に着いた直後の話【変更/一部カット】
ラファルが根城にしている無骨な城砦に辿り着き、暖炉のある部屋に入ったアンとシャル。
シャルがすぐに使われていなかった暖炉に火を起こし、燭台を灯した描写は背景と音声で表現されていました。
アニメでは背後にしゃがんでアンの肩を抱き、眠るまで手に温かい息を吹きかけてくれていたシャルですが、原作ではしっかり腰を落ち着けて背もたれの役割をしてくれます。
そして「人間のように、俺の肌が温かければ良かった」という胸の痛くなる台詞とともに吐息で手を温めてくれる描写に入ります。

情報が煩雑になるとわかっているけど、この台詞がカットになったのは残念だったなぁ…
放送前にふせったーで書いたけどこの台詞はこの先シャルの中で愛しいアンとの種族の違いを無慈悲に突きつけてくる序章のような台詞なので、考えれば考えるほど切ない…
そして原作ではそのままシャルの腕の中で抱きしめられた状態で髪を撫でられながら眠っており、その後ラファルが戦士妖精に運び込ませたベッドにアンを寝かせたためシャルが動けるようになるのですが、アニメではベッドを持ってくるシーンがカットになったので絨毯の上に横になって眠る描写に変更されていました。
あと、ホリーリーフ城出発前にラファルが口づけたのは原作では髪と頬と首筋の三箇所で、対するシャルの清めの口づけもなかなかに執拗な感じがしたのですが(笑)
アニメでは首筋一箇所のみで、アンが身じろぎしてシャルが冷静になるのも早かったので、まぁ18話の時よりはあっさりめでしたね。

まぁ今回はほかに重要なシーン・台詞が盛りだくさんだからね(笑)
ラファルとの会話終了後のシャル【カット】
原作ではアンが眠る室内でそのまま行われた兄弟間のやりとりですが、アニメでは場所を変えて行われ、複数ある話題の順序が変更されていました。その辺は別の段落で詳しくお話しします。
アニメではシーンの最後にラファルの「おまえがアンを不幸にする」を配置してドラマチックな引きの演出が施されておりましたが、原作では会話が終わってラファルが部屋を出たあと、シャルが眠るアンに触れながらラファルの言葉を咀嚼するシーンも描かれています。

そっか、ここカットだったんだ……ここも何気にアニメで見たかった場面なのよね。
アンといる時のシャル視点がアニメでシーンとして描かれることってほんと無いよね。
ひたすら隠されてる。
それを察しているので、ブログで感想を書き始めた頃からアニメで隠されているシャル視点に関して多くは語らないように気をつけています。ここで知るより、原作でしょ(^_^)☆
ダウニング伯爵に報告するヒュー・マーキュリー【追加】
アニメではヒューが在城しているときにオーランドが襲われたことから、すでに動いていたダウニング伯爵の兵。
しかしアンとシャルが連れ去られたあと、再び銀砂糖子爵へ連絡が行ったようでした。
原作だとペイジ工房から銀砂糖子爵に通報したのがこのタイミングだけだったので、これでアニメと原作の足並みが揃いましたね。

でも四章では銀砂糖子爵からダウニング伯爵に報告してるシーンは無かったですよね。
そうですね。原作はアンが連れて行かれてすぐエリオットから「銀砂糖子爵に通報しろ」と指示が出て、そこの地の文で銀砂糖子爵に通報すると後見人であるダウニング伯爵の権力で家臣団の他王国軍の一部を動かせると説明がありました。
兵が倍増できたのはそういったダウニング伯爵の権力あってこそのものですね。
そこをアニメで分かりやすくシーンとして追加したのだと思います。
報せを聞いて一人ホリーリーフ城を訪問するキース【変更/追加】
アンとシャルがラファルに連れ去られたという報せがラドクリフ派本工房にも届き、いてもたってもいられないキースが一人ホリーリーフ城へ馬を走らせているシーンについてです。
アニメでは馬を駆っていましたが、実は原作では主に見習いが使いに出る際に乗る一頭立ての小さな馬車で向かっています。

確かに馬を駆る方が焦りを表現するには良いかもね。
馬車をデザインする必要も無いし。
キースがどうやってその報せを知ってどのように出てきたのかの状況説明は原作ではすべて地の文で書かれていましたが、アニメではラドクリフ工房内でのシーンとして描かれ、マーカスからキースへの「おまえは歓迎されない」という台詞が追加されていました。
元銀砂糖子爵の息子が父親が修業したペイジ工房に入らなかった—— 14話でのヴァレンタインやナディールのような当事者と違い、マーカスのような言うなれば赤の他人がそのことを見てどう思っているのか、キースが一人で勝手に気にしてるのではなく実際に外からもそういうふうに見られていると否応なく突きつけられたワンシーンでしたね。
また、職人たちの部屋へ入るときにアニメでは直接エリオットに声をかけていましたが、原作では途中でブリジットに先に声をかけて勝手に入ってきた非礼を詫びています。
その流れでカットになった、ブリジットが「なぜ応対に誰も出てこなかったのか」説明をするシーンがあるのですが、キースが彼女のラドクリフ工房にいた頃からの内面の変化を感じ取ったのがとても印象的でした。

台詞は無かったけど、一応ブリジットもその場にはいたんですよね。
襲われる砂糖菓子職人や妖精商人【追加】
アンと共に連れてこられたシャルが、毎日何をさせられているのか。
原作四章ではアン視点の地の文で、帰ってきた彼らの様子、そして日増しに憂鬱そうになるシャル…という結果が語られ、ラファルの口から「邪魔者を取り除いてもらっているだけ」と言われているのみなのですが、アニメではその一部始終の描写が追加されました。
残酷な描写はアニメでは多少マイルドになるものですが、ここはむしろアニメが直接的で原作の方がアンにはっきりと告げられない分ふんわりしていて読者の想像に委ねてる感じがありました。
アニメで描写されたのは砂糖菓子屋の看板やラファルが持ってきた銀砂糖の樽に飛び散る血——

何が起きたのか分かりやすすぎるほどの描写だよね……
ラファルがアンに嬉々として語って聞かせるシャルの様子に乗せて流れる映像は、おそらく妖精商人から妖精たちを解放するために襲っている最中だと思うのですが、他の戦士妖精たちは無表情で粛々と業務をこなし、ラファルは薄ら笑い、シャルだけあからさまに顔をそらしてるんですよね。
そしてシャル自身が命じられて人間を手にかけるシーンでは、躊躇う腕や表情、斬られる直前の人間を見ないようにきつく閉じるまぶた、剣を振り下ろす瞬間に見える諦めたような哀しみの表情……
帰ったあとに斬った感覚を一人思い出す憂鬱な瞳まで、一切無駄なシーンがない素晴らしい補完でした。
仕事を続ける職人たち、捜索を続ける銀砂糖子爵【追加】
上記の妖精たちのシーンと並行して、キャット、ジョナス、キースの三人を加えたペイジ工房の職人たちがホリーリーフ城で雪の結晶を作っているシーン、銀砂糖子爵が護衛のサリムや甲冑の兵士を従え馬を駆って捜索を続けるシーンが流れています。
こちらもアニメオリジナルの演出ですね。

こういう、メインのシーン以外でもいろんな場所で並行して事が進んでる様子の表現は漫画や映像作品が得意とするところですよね。
特に映像はほんのちょっと映すだけでも記憶に残りやすいから。
というところで、今回の再編は以上です。
それでは本編行きましょう。
今回新しく登場したキャラクター
戦士妖精A(cv.石谷春貴)、妖精(cv.加藤渉,君成田晃佑)という三名が新キャラで登場したのですが、今回は感嘆詞のみで言葉を発さなかったので特に語ることが無く……
次回以降、原作ではルスルやアンとの会話やシャルとの会話のシーンがある妖精がいるので、そこで少しどんなキャラクターか分かるかなというところなので、そちらで紹介させていただきます。

石谷さん、第2クール放送前のオレラノでシュガーアップル出演してるって言ってたから「いつ誰の役で出るのか?!」とずっとわくわくしてたんだけど、まさかのラスト3話にしてようやく出るとか……焦らされすぎたー!笑
ラファル兄さんの妖精王育成講義
祖王セドリックが亡き友の亡骸のかわりにと弔い、その実なにものも決して生まれ出でることのないようにとの思惑も込められて礼拝堂に隠された最後の妖精王リゼルバの剣。
しかし夜目が利く月鷲が礼拝堂に迷い込み、その視線によって生み出され、百歳オーバーのシャルよりもさらに百年以上長く生きてきたラファル。
同じだけの知識を持って生まれながらも幼い少女に匿われて穏やかな時間を過ごしたシャルとは違い、ラファルは生まれた瞬間からその剣が誰のものなのか疑問に思い、行動した。
そして生まれた頃の時代背景も手伝って容易に情報を手に入れることができたラファルは、人間と妖精の歴史とその歴史の中に沈んだ最後の妖精王の意志、自身が生まれた意味を理解した——
そんなラファル兄さんから弟シャルへの講義シーンを、アニメと原作で比較しながら語ります。

アニメ脚本で短縮されたとはいえなかなかの長台詞……
ラファル役の斉藤壮馬さん、お疲れ様でした。
説明台詞の中にラファルが過去を懐かしみつつ切なげに、そして兄弟石に会えたことを静かに興奮しながら語る感情を込めたお芝居、素晴らしかったです!
妖精の創世記にある記述
部屋を訪れたラファルが初めに語ったのは、妖精から見た”人間”という弱い生き物のことでした。
元々は人間が妖精の奴隷だったこと。
最後の妖精王リゼルバが、使役していた人間—後の祖王セドリックを解放して友と認め、一度は妖精と人間が共生する道を目指したということ。
しかし妖精と人間は対立してリゼルバとセドリックは戦わなければならなくなり、結果人間が勝って今の人間が妖精を使役する世界になって五百年経ったということ——
アニメ11話にてそんな歴史が語られましたが、ラファルが初めに語ったのはその前…まだ人間が知恵を持たない獣だった頃の話です。
人間が今の人間の姿になる様を妖精は近くで見ていて、それを創世記に残した。
ラファルが生まれた時代は妖精が記した歴史的文章を容易に読むことができた時代で、それで知識を得たと原作に記述があります。
その文章を読んだラファルの所感は「我々とは違う」なので、彼には進化した今の人間すらまだ弱くて醜い下等種族に見えていそうですね。
そしてアニメではカットされていましたが、11話でシャルが読んだ古代ハイランディア文字は妖精が作った文字だという事実がついでに語られています。

1話でエマが「世間の人は”妖精は遊び暮らして人間に負けた愚かなやつら”って言うけど…」って言ってたのを思い出した。エマ曰く本当の勝因は”数の暴力”だったっけか…

妖精が残した文化的財産がこの五百年で徐々に人間の手によって抹消もしくは歴史が歪められて人間のものとして伝えられてきたからね。世間の人はそう思うよね。
しかしアニメでラファルが豊富な知識を持つ理由を語らなかったのは意外だったな。
最後の妖精王リゼルバの遺志
「おまえも知っているだろう? 妖精王の名を」
意図して隠されている妖精王の名前をシャルが生まれた時から知っていたという描写はすでに11話で出てきていますが、ラファルも生まれた時からその名を知っていました。
ただ、自身が生まれた貴石がはめ込まれていた朽ちた剣がリゼルバのものだったということは、妖精の創世記と同じく妖精が残した文章を読んで知ったようですね。
アニメではその剣を持っていたのが妖精王リゼルバであること、そして彼が、柄にはめ込まれた貴石のいずれかが次の妖精王になること望んでいたことのみが語られました。

原作だと三つの石を選んだのもリゼルバだって書いてありますね。
似た響きを持つ石を意図的に選んだ、とも。
そうですね。そしてこれもアニメではカットだったのですが、リゼルバは紅玉石(ルビー)の妖精で刃を作り出す能力があるので剣を持つ必要が無いと言うシャルに対し、次代の妖精王を生むために剣を身に付けていたと確信めいた口調でラファルが言っています。
先代の妖精王である自分の名前と、王となるべく必要な世界の基礎知識を備えて生まれてくるように、リゼルバが手を尽くした可能性……生まれたばかりの頃に持っていた知識や記憶のことを思うと、そうとしか考えられないのでしょう。
そして、決して目に触れることのないように人間たちが隠した貴石にエネルギーが満ちる頃、礼拝堂に迷い込んだ夜目の利く月鷲と、好奇心いっぱいな幼い少女が、それぞれオパールと黒曜石を見つめて妖精を生み出してしまった偶然を、ラファルは「妖精王の遺志が生んだ必然だ」と断言していました。

原作の兄さんは「必然かもしれない」ってちょっと弱めに言ってたのに……
礼拝堂を守る人間の一族
「リゼルバの剣は人間たちに守られていた。新たな妖精王の誕生など誰も望んでいない」というシャルの台詞で匂わされたのみで話題そのものがカットになりましたが、リゼルバの剣を納めた礼拝堂を守る役目を仰せつかった人間の一族がおりました。

これってなんか…あまりにも隠されすぎてて。
ネタバレあるの前提と言えど一ファンのブログで語って良いことなんですか?
話し始めといてあれですが、詳しくは語りません。すっごく語りたいけど、語りません(笑)
とりあえずアニメもよく見ると匂わせがところどころにあるので、何となくふんわりと気づいてる人もいるんじゃないかなーとは思いますが……
そういう一族がいましたよ、という話が原作で綴られています。
気になって仕方ないよという方はぜひ原作6巻を読んでみてください。

でもさー、一族のことはまぁ実際に歴史の研究とか世界のミステリー特番とかでもそういう特殊な役割を持った一族のことは触れることがあるからどこかで知る機会があったのかなって感じではあるけど。
ここだけに限った話じゃないけど、何でラファルはそんなことまで知ってるの!?ってこと多くない?

確かに……なんか彼たまに物知りのレベルを超えてるよね。
“つがいの妖精王”
アニメではラファルは「我々の力があれば妖精を自由にすることができる。そしてリゼルバの遺志を継ぎ、我々の国を取り戻すのだ」と”妖精王”という言葉を使わずにシャルを勧誘していますが、原作では「二人で妖精王となればいい」と”つがいの妖精王”への誘いを口にしています。

つがいの妖精王は支配力が強い、だっけ?
そうですね、リゼルバの前の妖精王は二人だったと最も古い碑文に書いてあったそうです。
妖精の自由という言葉に惹かれ、妖精を苦痛から解放するために何かをするべきかもしれないと考えるがしかしアンを思い出してすぐさま断るシャル。
ラファルはリゼルバの遺志は「次代の妖精王が人間と再び戦うこと」であると決めつけて考えているようなので、ラファルの誘いに乗ることになれば、アンやペイジ工房の人間たちを含めた人間全員と敵対することになりますからね…
そして原作で「羽を奪われた屈辱は忘れられないだろう?」と唆すような言葉を投げかけてくるラファルに対して、シャルの返事は「自分の羽をもぎ取った人間は死んだ。人間全てを敵にしたいほど憎いわけじゃない」というもの。
このあたり、第1クール2話あたりで、羽を返して妖精狩人から逃がしてくれたアンに恩返しする!と息巻くミスリルに「羽をもがれた痛みを忘れたか」と叱責したシャルを思い出します。
アニメではこういうときシャルの脳裏に浮かぶのはひたすらアンですし、原作でもまずはアンなのですが、その陰でしっかりとミスリルをはじめとする他の妖精や人間たちから影響を受けて考え方が変わっているのがよく分かって良いですよね。

元々は同じ考え方を持っていたなんて、こんなところにも兄弟を感じる…
アンとの関係への言及
さて、アニメでは最後に武器を構えながら言及していたアンとの関係についてですが、原作ではシャルがアニメと同じく「出て行け」と言い放ったあとに「俺はこいつのそばを離れる気はない」と続けたことによって先にこの話題が来ています。
アンのそばを離れる気がないシャルのために、原作のここのシーンはアンが寝てる部屋でそのまま繰り広げられたわけですが。
アニメでは場所を移動したためにカットされてしまった、シャルがアンを気に入っている理由を「確かに、髪や肌から銀砂糖の香りがして、そそられないでもないが」「抱いてみたら、おまえが執着するよさがわかるか?」と考察するフリをしながら意地悪をしに行くラファルにシャルが怒るシーンが本当にアニメで見たかった……「アンに手を出すな」はこの流れで発される台詞なんですよ……
まぁでも実際にアニメでお互い武器を構えて喧嘩してるシーンを見て、原作では武器出してないとはいえアンが寝てるそばでこれは無いな…って思ったので、それ以上何も思わなくなりましたけど(笑)
また、アンにあれだけ一途に重い深い愛情を向けているシャルがラファルの言葉一つで揺らいでしまった理由として、原作の地の文でも記述があったことですが、やっぱり10話でキースと向き合っていたアンを見て人が人の中で生きる幸せを理解しつつも”アンを手放しがたい”という気持ちが強くなるのに抗えない背徳感を引きずっているというのが大きいのだと思います。
それまではおそらく戯言、不快な雑音として聞いていたラファルの言葉ですが「共に生きる相手として、人間は人間同士、妖精は妖精同士でいるのが自然だからな」と言われた時に図星を突かれたように表情が変わる演出をされていましたしね。

ただの浮かれポンチじゃなかったわけですね…

まぁ初恋というふわふわ甘いのに胸の内側がジュッと焦げるような、今まで感じたことのない不思議な感覚に正気を奪われていたのは事実なんだと思いますわ…
しかし、ラファルがこの話題を口にする時の言葉選びやアニメで実際にアフレコされた口調から、彼はシャルとアンの関係を心から嘲ているんだなぁと感じました。
物語が進むと実はそれだけじゃなかったんだなと思った覚えがあるのですが、少なくともこの段階では。
長代理の”らしくない熱”が坊やの雪を溶かす

アンがさらわれたと聞いてホリーリーフ城に文字通り飛んできたキースが見たものは、平然と仕事を続ける職人たちの姿でした。
あなたのために今、私ができること
キースがどんなに吠えてもエリオットは返事こそするもののキースと目を合わせることもなくひたすら銀砂糖を練っています。
まるで何らかの感情に急き立てられて必死に、あるいは何かから目をそらすために意識的に没頭しようとしているような、わざとらしさすら感じる態度で。
しかし熱くなっているキースはそんな様子に気づくこともなく、エリオットの地雷を踏み抜くことになってしまうのです。
キースの襟首を締め上げながら苛立ちと怒りを隠すこともなく早口で捲し立てるエリオットがものすごく新鮮で、けど「らしくないことしてるなぁ」と思いました。

確かに確かに。まぁ今回はその場にいなかったからあれだけど、こういうときに一瞬で沸騰してがつっといくのはキャットとか……あと話題によってはアンやシャルもそうか。
まぁその辺の人たちの仕事って感じだよね。

今回はそのキャットが逆に静かな目で諌めてるっていう構図が面白い。
アンはペイジ工房と長代理の立場である自分をこれ以上傷つけさせないために、赤い妖精にその身を差し出した。あの時、彼女ができることで最もみんなのためになる選択をした。
赤い妖精を追いかけてアンを助けることが自分にできるならそうしたい。
でもできないから、せめてアンが無事に戻ってきた時に立派に仕事が進んでる状態で迎えたい。
一番やりたいことができなくて、それでも不安を押し殺して現状でできる中で一番アンのためになることを必死でやっているときにその一番やりたいことを「何でやらないのか」「アンがペイジ工房の職人じゃないからか」なんて外野に言われたらそりゃらしくもなく爆発しますよね。
第2クールの最初から…もっと言うと第1クールで登場した時から、一派閥を背負う立場でありながらアンに対して何の差別意識もなくフラットに、むしろ「何かが変わりそう」だと少し高めの位置から期待の目を向けていた、”変化”という意味ではすでに完成されているように見えたエリオットですが、最初の銀砂糖たる彼女によってもたらされたものは確実に彼の中にもあったようです。
エリオットの剣幕にびっくりしつつもペイジ工房の職人たちが「アンのために仕事を進めている」という言葉に冷静さを取り戻したキースはすぐに自分の行動を反省して自身がアンやペイジ工房のためにできることを考え、行動に移します……が、アニメではその前に、21話で華麗に飛ばされた6巻一章で銀砂糖が固まったときに心配して訪問したはいいもののエリオットにいじめられて帰ったキースのエピソードであった会話がプラスされていました!

管理人最近事あるごとにキースいじるよね…(苦笑
そろそろキースファンに怒られますよ。
「キースってさ、結構自意識過剰だよねぇ」
原作では銀砂糖が固まる事件を、アニメではアンがさらわれたことを心配してペイジ工房を訪問したはいいものの、自分は父親がお世話になったペイジ工房を捨てた裏切り者であるという負い目に囚われているキースに、エリオットがあっけらかんと告げました。
確かにペイジ工房編に入ってから「父は関係ない。僕は僕だ」と言いつつもいつもペイジ工房を通して常に父親を意識しているし、元銀砂糖子爵の息子という自分の価値を少し過大評価しているような印象すら受けていますね……
まぁ辛口コメントはさておき、ここのシーンは原作・アニメそれぞれでタイミングが違うことにより何とも言えない良さみが出ていて結構好きです。
原作ではエリオットの台詞に「キースの決断を『ペイジ工房に入らないなんて、あいつはバカな決断をしたな』って世間に言わせられなかったのは、俺たちの責任だ」という言葉が続いていて次期長としての誇りを感じますし、何度も言っているように足早に帰るキースを見て「エリオットにいじめられた」としみじみ感想を言い合う長生きの妖精たち、またエリオットとキースの人生経験の差がよく分かるシーンとなっています。
対してアニメではジョナス参画後にこのシーンを持ってきたことにより「ラドクリフ殿の方が、よっぽどこだわるんじゃない?」という言葉に対してジョナスの妙に実感のこもった「確かに…」が加えられて、エリオットの言葉により信ぴょう性が増しました(笑)

ジョナスの肩に乗ったキャシーも実感のこもった表情してたもんね(笑)
また、アニメで気持ちを落ち着けた後「君だけが原因でうちが傾いたわけないじゃない」といっさいこちらを見ずに話し出すエリオットのいつもと違う横顔を見て、自分が”裏切り者”であるという意識以外にも知らずうちに囚われていた忌避しているはずの古いこだわりに気づくキースの瞳が切ない色から心を決めた強い色に変わるさまも印象的でした。

ミスリルのまっすぐな問いかけが良きサポートをしたね。
そうですね。自分で決めただけのときは決意の瞳に少しだけ不安の色が残っていたように見えたのですが、ミスリルに改めて「いいんだよ」と答えたときは完全にふっきれたような表情をしていました。
踏みつけられた乙女の希望
ラファル一派が砂糖菓子屋を襲って銀砂糖を強奪、そして口封じのために職人を殺して城に戻ってくるシーンで、雪の中に一輪咲いている白い花をラファルの靴が踏み潰して無惨に萎れてしまう描写が挟まりました。
おそらく私たちの世界にあるスノードロップという花がモチーフだと思われます。
スノードロップの学名はギリシャ語で「乳白色の花」という意味の「Galanthus nivalis(ガランサス・ニバリス)」といい、和名の「待雪草(まつゆきそう)」は、雪の中で健気に咲く姿に由来するといわれています。
そしてスノードロップの花言葉は「希望」「慰め」「恋の最初のまなざし」など。※出典:スノードロップ - Wikipedia
乳白色は銀砂糖の色で、和名の由来からは雪が積もり寒い城に囚われながらも折れかけている心を必死に支えているアンを連想させますね……
そしてこのあとに続くシーンではラファルがアンの心を踏み潰しにかかり、救いを求めて逃げ込んだ先では在りし日に自分の心を慰めた純真無垢な妖精の言葉に涙を流し心を手折られてしまうアンが描かれるので、この意味深に挟まる描写はその匂わせの役割を担っていると考察できます。

これからそういうシーンやるから心して見てくれよな!という脚本・絵コンテ担当からの優しいメッセージとも言えるね?あれ、そうでもない?

そうとも言える気がするけど…それにしては直前すぎるんだよな(笑)
「おまえが彼を不幸にするぞ」

シャルが不在の時を見計らい、銀砂糖の樽を持ったラファルがアンのもとへやってきて先日シャルにした「人間は人間同士、妖精は妖精同士」の話で現実を分からせるシーンです。
内容は概ね原作と変わりないのですが、変更が一箇所とカットが二箇所ありました。
変更されたのは、アンが砂糖菓子を作らないために殺されたあと後任として連れてくる銀砂糖師の話です。
原作では「同じ工房にいたあの男の銀砂糖師」と、城砦に連れてこられる際にアンとシャルが守ったエリオットに再び手を出すぞと脅されるのですが、アニメでは「同じ工房の誰か」と言われています。

これはアニメでカットされたシャルの「今長代理の身に何かあれば〜」が対応しているやつですね。

正直エリオットに手を出される=ペイジ工房の終わりみたいな状況は原作でもアニメでも変わらないんだけど、”誰か”とにごされることで守る範囲が広くなって実際襲われなかったとしても負ってしまうダメージがでかいんよね。ほんと狡猾だわ〜〜…
カットになった一つ目は、シャルが妖精の仲間と生きられるようにアンができる努力、その具体的な方法を教えてくれ、結果を出したらおまえを解放してやってもいいというラファルの言葉、そして二つ目は、シャルのことを想うあまりその言葉に惑わされそうになるも、彼はブリジットや工房のみんなを騙したという実績を思い出して「あなたの言葉なんか一つも信じられない!」と叫んで逃げるアンです。
アンに関してはラファルから逃げる動作が原作と同じなのでカットより変更と言った方が適切な気がしますが、アニメでは何も言わずに逃げたのでカットの扱いにしています。

これがカットされたことでラファルの言葉がめちゃくちゃ効いてる印象になったよね。

確かに。あと原作の時よりアンがラファルを怖がってる感じが強くなったかも。
また、原作・アニメどちらにも共通している点で、シャル→アンへの感情に対しては「お気に入り」「ご執心」「愛着」「執着」など嘲たり棘を感じる言葉を遣っていたラファルですが、アン→シャルの感情に対しては一貫して「好き」なんですよね。
人間が妖精に対して憧れたり尊敬したり恋をしたりするのは当然だけどその逆はありえないという、ラファルが芯から人間を憎み見下しているのが透けて見える気がします。
その一方で「生涯彼を傍に置いて楽しめる」とおまえが否定している世間の慣習をおまえ自身がやろうとしているんだよと、アンという世間とは違う信念を持つ人間に対してのクリティカルヒットを繰り出すなど、台詞ごとの声や顔の表情変化も含めて本当に頭が回ること回ること……まさに老獪、狡猾、そんな言葉がぴったりな妖精です。
自ら自由を捧げた無垢な命

ラファルに突きつけられた現実から逃げ、シャルを探して迷い込んだ妖精たちの部屋。
そこでラファルに解放され連れてこられた戦士妖精たちと、かつて自身が生み出し自由を願って見送った草の実の妖精ルスル・エル・ミンに遭遇したアン。
彼らは皆、忠誠の証としてラファルに片羽を捧げていました。
その状況をおかしいと思わない妖精たちや、仲間をも支配するラファルに怒り涙を流すアンですが、ルスルや他の妖精たちはその涙の意味が理解できません。
ここで泣きながら怒るアン役の貫井さんのお芝居が本っっ当に真に迫っていて心を持っていかれたというか……呼吸や複雑な声色の使い分けが演技じゃないみたいでつい涙ぐんでしまいました。

そんなアンを見てもずっと無感情で、あげく「このお嬢さん、なぜか泣いているのだけど
」って訊いてくるルスルがちょっと怖いと思ってしまった……
生まれてたった一年で、生まれる前はほとんど人の通わぬブラディ街道の宿砦内に咲いた植物だったこともあってか、知識も少ないし情緒もかなり未発達ですよね。
そして商人や狩人などの人間から解放してもらった恩義のある妖精たちと違って、ルスルは2枚あった羽をラファルに差し出しているという事実。
ラファルが妖精たちを解放する場面を見て感銘を受けたと想像するのが妥当かなとは思いますが、実際にはどういう経緯があったのでしょうね……

アンが妖精の羽に対して思う「綺麗」という言葉がルスルには刺さったようですが…
確かに、それは原作でも生まれてはじめて聞いた言葉のようにそれを繰り返した。そしてさらに困惑した表情になる、と記述があります。
アニメでは自分の背に残った片羽を見ながら「綺麗…?」と呟くとても印象的なシーンになっていました。
最後に。

ラファルの城で会った妖精たちの現状に怒り涙を流すも、その場にいる誰にも理解されないアンを連れ帰ったシャル。
原作四章は、羽を返すことと羽を奪うことの意味を考えろとシャルが妖精たちに告げたところで終わっているのですが、アニメではその後「どうしたらいいか分からない」ときつく眉を寄せて口を引き結び涙を浮かべるアンと、彼女の肩を抱きながら悲しげな顔で見つめるシャルのシーンが追加されていましたね。
そのあと意味深に映されるラファルの後ろ頭、アンの肩を抱くシャルの右手、そして笑みを浮かべるラファルの口元。
原作6巻五章での展開を知っている方は、この描写にピーンと来た方も多いのではないでしょうか……
他に重要なシーンが山ほど控えている五章なのでじっくり描かれる可能性は低いですが、この意味深なカットに対応するシーンがね、あるんですよね。原作に。

次回への伏線か、それともアニメオリジナルの何かがあって、それの仕込みなのか…果たして…?!

次回も楽しみ…早く見たい…
次回予告映像
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